歯周病とは、歯を支える歯茎や歯槽骨が口内の歯周病菌によって破壊されていく病気です。
歯周病菌が、ブラッシングが不十分になりやすい歯と歯茎の境目(歯肉溝)などに繁殖し、歯肉の周囲に炎症を引き起こします。
初期の段階では痛みをほとんど感じることはありませんが、それ故に歯肉溝(歯周ポケット)が気付かないうちにどんどん深まり、歯槽骨とよばれる歯を支える土台を溶かすことで歯がグラついてきます。
そして、抜歯が最終的には必要となるケースもあります。

歯周病の進行段階
歯周病は一般的に、次の段階をたどって進行します。
- 1.健康な状態
歯茎と歯とのすき間(ポケット)がなく、引き締まっている。
- 2.軽度歯周病
赤く歯茎が腫れあがり、歯磨きや固いものを食べることで出血してしまう場合もある。
- 3.中度歯周病
骨がポケットの炎症の慢性化して、溶けはじめる。口臭もあり、ほかにも歯が浮いたような感じがする。
- 4.重度歯周病
ほとんど歯根を支える骨が溶けてしまう。歯のグラつきが、歯根が露出することでひどくなる。
顕微鏡検査 ~歯周病菌の種類を特定します~

当院ではお口の中の歯垢(プラーク)を取り去ったのち、顕微鏡を使ってお口の中の細菌の状況を確認する『顕微鏡検査』を実施しています。 この検査により、菌の種類をはじめ、菌の大きさや数、活発性などを把握することができ、適切な薬剤の処方に繋げます。
歯周病を進行させる悪玉菌の種類
近年の研究では、歯周病菌の種類は800種類を超えることが分かっています。 なかでも、歯周病の進行を進める代表的な悪玉菌には、以下のようなものがあります。
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1.カビ菌(カンジダ菌)
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2.スピロヘータ(歯周病原菌)
歯周病原菌はウネウネと蛇のように動く毒性の強い細菌で、毒素を歯肉の中に出しながら増殖します。治療方針はこのスピロヘータの数によって分かれます。
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3.運動性桿菌(かんきん)
ウインナーが飛び回っているように動く特徴を持つ口腔常在菌の一種です。毒素を歯肉の中で出しながら増殖するため、口臭を引き起こす原因にもなります。お口の中が汚れている場合は、砂嵐のように多量に見られます。
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4.原虫
口腔トリコモナス(べん毛虫類)や歯肉アメーバなどの単細胞の原性動物。重度の歯周病にかかった患者様に多数見られます。
全身疾患と関連性の深い歯周病
歯周病は糖尿病や低体重児早産、誤嚥性肺炎など、さまざまな全身疾患と関連性があることが分かってきています。
なかでも2019年1月に発表された新しい米国研究チームによると、歯周病と『アルツハイマー』に関連性がある可能性があることを指摘しています。
歯周病の悪玉菌の1つ「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌(Pg菌)」がアルツハイマー患者の脳内で確認されたからです。
アルツハイマー病とは、「アミロイドβ」と呼ばれる特殊なタンパク質が脳内に蓄積することで、正常な神経細胞を変化させ、脳の働きの低下・脳の萎縮などを招く脳疾患です。
同研究では、口内にPg菌を感染させたマウスを観察していたところ、6週間後に脳内でPg菌が確認され、同時に「アミロイドβ」も著しく増加していたことが分かりました。
これらの研究はまだ「可能性」の段階に過ぎませんが、歯周病と全身疾患には深い関連性があることは疑いようがありません。
実際、糖尿病に罹患している患者に歯周病治療を行ったところ、糖尿病が改善されたケースも多く報告されています。
全身疾患の予防のためにも、歯周病がある方は早期解決が望まれます。
